2026年度前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』。主人公のひとり・一ノ瀬りんのモデルは、日本で初めて正式な看護教育を受けた「トレインドナース」として知られる大関和(おおぜき ちか)です。和は江戸時代末期、現在の栃木県大田原市・黒羽(くろばね)地区に生まれました。市内や黒羽エリアには、今も彼女ゆかりの場所が数多く残っています。
そこで、和の人生をたどりながら巡るおすすめモデルコースをご紹介。東京から車で約2時間とアクセスも良好なので、ドライブを楽しみながら、和が生きた時代の面影に触れてみませんか。
大田原市・黒羽へのアクセス
大田原市の黒羽地区へは、最寄駅から徒歩圏外でバスの本数も限られるため、車でのアクセスが便利です。東北自動車道の西那須野塩原ICから南東へ車で約35分、または矢板ICから北東へ車で約45分の場所にあります。
公共交通機関を利用する場合は、東京駅から東北新幹線に乗車し、那須塩原駅へ向かいましょう。そこから、タクシーやレンタカーで南西へ約20分移動すれば到着です。
「明治のナイチンゲール」と呼ばれた大関和とは?
大関和は1858(安政5)年、黒羽藩の家老を務めた大関増勤(おおぜき ますつね)の次女として生まれました。黒羽藩の藩主も「大関」姓でしたが、和の家系は藩主家とは別の一族です。
19歳で黒羽藩次席家老の次男と結婚した和は、2人の子どもを授かった後に離婚。その後、子どもたちとともに東京へ移っていた実家に身を寄せ、1886(明治19)年、「桜井女学校附属看護婦養成所」に第1期生として入学しました。ここで日本初となる本格的な看護教育を受け、「トレインドナース」としての道を歩み始めます。
そして1888(明治21)年には、「東京大学医学部附属病院」の外科看護婦長に就任。日本の近代看護の発展に大きく貢献しました。その功績から「明治のナイチンゲール」とも呼ばれ、『風、薫る』の放送を機に、改めて注目を集めています。
大関和ゆかりの地を巡る|黒羽地区のおすすめスポット
那珂川(なかがわ)沿いに広がる黒羽地区は、1576(天正4)年に戦国武将・大関高増(おおぜき たかます)が黒羽城を築いて以降、明治維新までの約300年間、大関家が治めた城下町です。歴史ある町並みには、大関和が生きた時代を感じさせる風景が今も残っています。
大関和の功績を刻む「大関和記念碑」
大関和ゆかりの地を巡る旅は、「大関和記念碑」からスタート。記念碑は矢板ICから北東へ約35分の場所にある、大田原市立黒羽小学校の目の前に建てられています。
そばには和の生涯をまとめた解説板もあり、理解を深める旅の出発地点にぴったりです。
大関和記念碑
- 住所
- 栃木県大田原市黒羽田町525 大田原市立黒羽小学校前
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「黒羽神社下」停留所下車後、徒歩約3分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約35分
また、記念碑の斜め向かいには「黒羽神社」もあります。境内には、和が黒羽で幼少期を過ごした頃の藩主・大関増裕(おおぜき ますひろ)の胸像もあるので、あわせて立ち寄ってみてください。
黒羽神社
- 住所
- 栃木県大田原市黒羽田町493
- 開門時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「黒羽神社下」停留所下車後、徒歩約3分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約35分
黒羽藩主・大関家に連なる歴史と春の風景「黒羽城址公園・黒羽芭蕉の館」
黒羽は自然と歴史が調和する情趣豊かな地域で、俳人・松尾芭蕉が『奥の細道』の旅の途中で14日間滞在した地としても知られています。
そんな黒羽の歴史を語るうえで欠かせないのが「黒羽城」です。栃木県北部最大級の規模を誇る山城で、南北約1,500メートル、東西約250メートル、総面積は約37.5ヘクタールにおよびます。
現在、城そのものは残っていませんが、本丸跡地は「黒羽城址公園」として整備されており、往時の面影を今に伝えています。
中でも注目したいのが、深さ約10メートルにもなるV字形の「空堀(からぼり)」です。空堀とは、敵の侵入を防ぐためにつくられた、水を張らない堀のこと。黒羽城では、本丸と三の丸を隔てる重要な防御施設として使われていました。
現在も当時の姿をほぼそのまま残しており、黒羽城の歴史を感じられる見どころのひとつとなっています。
周囲の自然も魅力で、春には桜、5月初旬には牡丹、6月下旬から7月上旬には紫陽花、秋には紅葉と、季節ごとに異なる風景が広がります。
黒羽城址公園の近くには「黒羽芭蕉の館」もあります。館内では、黒羽藩主・大関家や松尾芭蕉にまつわる資料が見学可能。また、建物には地元・八溝山(やみぞさん)周辺で産出される木材がふんだんに使われており、歴史資料だけでなく、建築の美しさにも注目したい施設です。
ここでぜひ見てもらいたいのが、大関家に伝わる「領知朱印状(りょうちしゅいんじょう)」。これは、将軍が代替わりするたびに藩主へ与えられた公式文書で、黒羽藩には合わせて10通が伝えられたとされています。
館内では、その「領知朱印状」を時折入れ替えながら展示しており、取材時には五代将軍・徳川綱吉のものを見ることができました。
松尾芭蕉に関する展示では、黒羽滞在中の足跡を詳しく紹介したパネル展示も見どころです。
『奥の細道』の約150日間の旅の中で、芭蕉は黒羽に13泊14日と最も長く滞在しました。館内では、黒羽で詠まれた句も紹介されており、芭蕉が見た風景や当時の旅の様子に思いを巡らせることができます。
館内の一角には、『風、薫る』の原案本『明治のナイチンゲール 大関和物語』の著者・田中ひかるさんのサインや、出演者に関するパネルなども展示されており、ドラマの世界観に触れられます。作品ファンにとっても、うれしいスポットです。
黒羽城址公園・黒羽芭蕉の館
- 住所
- 栃木県大田原市前田980-1
- 営業時間
- 9:30〜17:00
- 休館日
- 月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 入館料
- 一般300円、小中学生100円
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「大雄寺入口」停留所下車後、徒歩約10分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約35分
黒羽藩主・大関家の氏神として歴史を守る「那須神社」
黒羽城址公園から西へ車で10分ほど行った場所にあるのが「那須神社」。古くから黒羽藩主・大関家の氏神として信仰を集めてきた歴史ある神社で、家老の家に生まれた大関和にとっても、身近な場所だったと伝えられています。
樹齢約450年とされる杉の巨木が連なる参道は、神聖な雰囲気。境内には、楼門・拝殿、灯籠など400年以上の歴史を持つ建造物が並びます。
また、拝殿の裏手には「金丸塚(かなまるづか)」と呼ばれる場所があります。一説には、和の祖父がこの地で自害したとも伝えられており、大関家の歴史を感じさせる場所です。
社務所では、大関和をモデルにした大田原市の公式キャラクター「チカちゃん」がデザインされた絵馬や御朱印、お守りを授かることができます。
取材した日も、御朱印を求める多くの参拝者でにぎわっていました。
那須神社
- 住所
- 栃木県大田原市南金丸1628
- 開門時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「金丸小学校前」停留所下車後、徒歩約6分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約30分 - 公式サイト
- 那須神社
大田原市で感じる大関和の足跡
黒羽地区の散策を満喫したあとは、「那須神社」のすぐ隣に位置する「道の駅 那須与一の郷」でひと休み。農産物直売館や物産品館、レストランなどがそろう大型複合施設です。
大関和の特別企画展が開催中「那須与一伝承館」
敷地内には、源平の合戦で活躍した武将・那須与一(なすのよいち)の生涯と、那須家や大田原市の歴史を紹介する「那須与一伝承館」もあります。
毎時0分と30分から上映される、約14分間の「扇の的劇場」は必見。源平合戦における那須与一の活躍を、からくり人形劇で紹介しています。
さらに2026年3月14日〜11月3日まで、特別企画展「近代看護の先駆者・明治のナイチンゲール大関和」が開催中。
大関和の生涯・功績に加え、幕末から大正期にかけての医療環境や黒羽の歴史、和の著作物なども展示されており、『風、薫る』の世界観をより深く味わえる内容です。
那須与一伝承館
- 住所
- 栃木県大田原市南金丸1584-6「道の駅 那須与一の郷」内
- 営業時間
- 9:30〜17:00(入館は16:30まで)
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 入館料
- 高校生以上300円、中学生以下無料
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「道の駅那須与一の郷」停留所下車後、徒歩約1分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約30分 - 公式サイト
- 那須与一伝承館
物産館でスイーツやお土産ショッピングを満喫
同じく敷地内にある「加工・物産館」には、大田原市ならではのお土産がそろうショップや、大関和にちなんだジェラートを味わえるお店があります。
「Frecciare(フレッチャーレ)」では、大田原市ブランド認定品「ジェラートYoichi」(480円~)が味わえます。にんじんやとうがらし、お酒、お米など、地元産の新鮮野菜や果物を使ったフレーバーが次々と登場し、訪れるたびに新しい味に出合えるジェラート工房です。
迷ったときは、「パン・ペルデュジェラート フレンチトースト味」(580円)がおすすめ。大関和が愛したと言われるフレンチトーストをイメージしたフレーバーです。メープルシロップとバニラの組み合わせが絶妙で、一度食べたらやみつきになりますよ。
ドラマの放送を機に誕生した「大田原銘菓チーズ饅頭」(6個入り・1,080円)も見逃せません。
2024年9月にフランスで開催された国際的なチーズコンクール「モンデュアル デュ フロマージュ」で金賞を受賞した、「大田原チーズステーション」のチーズを使用した焼き菓子です。
甘さ控えめで濃厚なチーズの風味が際立つ大人の味わいは、コーヒーはもちろん、お酒にもよく合います。
パッケージは大関和をイメージしたシルエットがデザインされ、手土産としても喜ばれそうです。
道の駅 那須与一の郷
- 住所
- 栃木県大田原市南金丸1584-6
- 営業時間
- 9:00~17:00
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「道の駅那須与一の郷」停留所下車後、徒歩約1分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約30分 - 公式サイト
- 道の駅 那須与一の郷
地元グルメを味わえる老舗洋食「岡繁」
「道の駅 那須与一の郷」で展示や買い物を楽しんだあとは、西へ車で約10分の場所にある「岡繁(おかしげ)」でランチを。もともとは精肉店として営業していましたが、1953(昭和28)年に洋食店へと姿を変えました。
「食べ盛りの男性にも満腹になってもらいたい」というオーナーの想いから、どのメニューもボリューム満点です。
中でも一押しは、大田原市の特産とうがらし・栃木三鷹(とちぎさんたか)を使った「さんたかからあげ」(1,100円)。ピリッとした辛みと旨みのあるタレが衣と肉によく絡み、カリッとした食感とジューシーな肉汁が絶妙にマッチ。ご飯が進むおいしさです。
辛いのが苦手な人には「オムビーフライス」(1,350円)がおすすめ。「オムライス」と「ビーフシチュー」を合わせたメニューで、オムライスに濃厚なビーフシチューをたっぷりとかけた、満足感たっぷりの一皿です。
大田原で三代続く老舗洋食店の味を、じっくり堪能してみてください。
岡繁
- 住所
- 栃木県大田原市山の手1-3-9
- 営業時間
- 11:30〜14:00(L.O.13:45)、17:30〜21:00(L.O.20:30)
- 定休日
- 日曜日
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「住吉町交差点」停留所下車後、徒歩約10分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約30分
歴史を感じる桜の名所「大田原城跡(龍城公園)」
大田原市街の中心に位置する「大田原城跡(龍城公園)」は、16世紀に築かれた大田原城の跡地です。現在は公園として整備されていますが、園内には深い空堀や土塁(どるい)※などが残されており、かつての城の面影を感じることができます。
※土塁…敵の侵入を防ぐため、城や砦の周囲に土を盛り上げて築いた防壁のこと
園内は起伏に富んでおり、ウォーキングにも最適。四季折々の自然を眺めながら、心地よい時間を過ごせます。
取材時はちょうど桜が散り始める頃で、地面一面に花びらが広がる、この季節ならではの美しい景色を見ることができました。
大田原城跡(龍城公園)
- 住所
- 栃木県大田原市城山2-3925
- 開園時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- アクセス
- 【電車】JR「西那須野」駅からバスで「龍城公園前」停留所下車すぐ
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約30分
大正の蔵屋敷で味わう自家焙煎コーヒー「COMMON&」
旅の最後は、大田原市中心部にある「COMMON&(コモン アンド)」でしめくくり。大正時代から残る蔵屋敷をリノベーションした、趣あるカフェです。
自家焙煎のコーヒーは、常時7〜8種類と豊富なラインナップ。オーナーが丁寧に抽出する「ハンドドリップコーヒー」(550円)は、落ち着いた空間でゆっくり味わいたい一杯です。
ケーキは「バスクチーズケーキ」(550円)、「キャロットケーキ」(550円)、「ガトーショコラ」(550円)、「季節のタルト」(650円〜)など4種類以上から選べます。
コーヒーの香りと旅の余韻に身をゆだねながら、蔵を生かした落ち着いた空間でおだやかなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
COMMON&
- 住所
- 栃木県大田原市中央1-2-14
- 営業時間
- 11:00~17:30(L.O.17:00)
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 【電車】JR「那須塩原」駅からバスで「住吉町交差点」停留所下車後、徒歩約7分
【車】東北自動車道「矢板」ICから車で約30分
ドラマ『風、薫る』の放送をきっかけに、注目を集めている「明治のナイチンゲール」こと大関和。
故郷の大田原市・黒羽エリアには、和ゆかりの歴史スポットをはじめ、地元グルメを楽しめるお店など、立ち寄りたい場所が点在しています。日帰りでも十分満喫できますが、少し足を延ばせば那須や日光にもアクセスできるため、宿泊しながら栃木観光をゆっくり楽しむのもおすすめです。
取材・文/望月優衣 撮影/村岡正章
