楽天トラベルの「食事評価が高い宿ランキング」で、3年連続全国1位。
その実績の裏側にあるのは、ただ「おいしい」だけでは語りきれない、深いおもてなしの心でした。
伊豆・伊東にある「金目鯛の宿 こころね」は、岸本さん夫婦が営む1日6組限定の小さな宿。
おいしい料理だけでなく、絶景、温泉……そしてその先にある「心のつながり」を大切にしています。
なぜこの宿は、これほどまでに人の心をひきつけるのでしょうか。ゲストの記憶に深く刻まれる宿づくりについて、お二人に伺いました。
目次
「こころね」の概要&アクセス
楽天トラベルに登録されている全国約40,000軒の宿泊施設の中で、「クチコミ高評価!食事評価が高い宿ランキング(シティ&レジャー)」の頂点に3年連続で輝き、2025年には最高峰の「ゴールドアワード」を受賞。いま最も高い支持を集めている宿の一つが、伊豆・伊東にある「金目鯛の宿 こころね」です。
アクセスは、都心から特急で約2時間。JR「宇佐美」駅から送迎車で5分ほど。宿は高台に位置するため、名物の急勾配な「手繋ぎ階段」を登って向かいます。思わず隣の人と手を繋ぎたくなるほどの石段を登りきると、そこが玄関口。
振り返れば、視界いっぱいに広がる相模灘の青い海と伊豆の山々が。耳に届くのは風に揺れる木々の音と、小鳥のさえずりだけ。ここは日常を忘れ、ただ自然の静寂に身を置ける特別な場所です。
「こころね」を営むのは、岸本昭男さん・有紀さんご夫妻。2007年に、10年以上勤めたペンションを譲り受け、自らの理想を形にした宿として再出発させました。
昭男さんは魚専門店で板前修業を重ね、有紀さんは栄養士の資格を持つ食のプロ。二人三脚で歩み続け、2026年には創業19年目を迎えました。
宿の看板メニュー・金目鯛のこだわり
お二人が看板メニューに選んだのは、伊豆の恵みを象徴する「金目鯛」です。
下田産の金目鯛の中から、2人前でおよそ1キロという特大サイズを厳選。それだけに、夕食のテーブルに運ばれた瞬間のインパクトは圧倒的です。「わぁ、すごい!」「こんなに大きいの!?」と、あちこちから歓声が上がることもめずらしくありません。
仕入れは、20年来の信頼を寄せる下田の業者から。昭男さんが自ら魚を見極め、「煮付けか、しゃぶしゃぶか。料理の完成形が浮かぶもの」だけを買い付けています。
そうして選び抜かれた金目鯛の味を仕上げるのは、創業以来、継ぎ足し続けてきた「秘伝のタレ」です。配合は酒・醤油・砂糖という、いたってシンプルなもの。しかしそこには、19年間で何万匹もの金目鯛を煮込んできた旨みが凝縮されています。
深い飴色に輝くタレのツヤは、金目鯛から溶け出した天然のコラーゲンがたっぷり含まれている証拠。
── 味のこだわりを教えてください。
「金目鯛の煮付けは、甘すぎるとお客様が途中で飽きてしまう。特大のサイズを最後までおいしく食べきっていただきたいので、色付けはしっかりつけながらも、甘すぎず濃すぎない塩梅を心がけています」
火加減もこころね流。沸騰させず、コトコト煮込むこともせず、静かに身が膨らんでいくような弱火でじっくりと中まで火を通します。その後、15分ほど寝かせて味をなじませているそう。
さらに、顔の周りのウロコまで丁寧に取り除く下処理も、昭男さんのこだわりのひとつ。「きれいに食べてほしいから、口にウロコが残るようではいけない」と、指先で何度もなぞるようにして状態を確認します。
メインの金目鯛の煮付け以外にも、伊東港でその日水揚げされた刺身の盛り合わせや、季節の炊き込みご飯がぜいたくについたコースを楽しめます。
※金目鯛の姿煮は、2名で1匹
さらに、「こころね」の名物イベントが「猫またぎ選手権」です。ルールは簡単。猫が見向きもしないほど、きれいに完食できたら優勝!というユニークなもの。自由参加ながら、これまで2,000組以上が挑戦してきました。約4か月の期間内の挑戦で、みごと優勝した人には、特大の「金目鯛の煮付けセット」をプレゼント。
あの感動を自宅でも再現できるのは、うれしいですよね。
選手権誕生のきっかけは、お客様の「金目鯛をきれいに食べるコツを知りたい!」という声から、手作りの「食べ方ガイド(指南書)」を作ったこと。
完成した食べ方ガイドを見て、昭男さんが「それなら、みんなで完食を目指そう!」とひらめいたのが、「猫またぎ選手権」の始まりです。
ちなみに、参加するだけで、非売品の飴玉がもらえます。「猫またぎ選手権」はおいしく楽しいだけでなく、食育やフードロス削減にも一役買っていると言います。
さらに、昭男さんが考案した「オリジナルの宝くじ」も15年続く人気企画です。
対象は、常連さんや「仲間になりたい!」と言ってくれたファンの方々。一年に一度、オーナー夫妻が自ら抽選を行います。
くじは1等から5等まであり、何が当たるかはその時のお楽しみ。宿とリピーターをつなぐ、心温まるイベントです。
1匹丸ごと、だしまで楽しむ「金目鯛のしゃぶしゃぶ」
もともと金目鯛の「煮付け一本」でスタートした「こころね」。 「次はしゃぶしゃぶも食べてみたい!」というリピーターさんの声が、新たな看板メニューを生みました。
最大の特徴は、アラを丸ごとぜいたくに使っただし。煮込むほどに濃厚な旨みが溶け出し、深みが増していきます。合わせる野菜は、金目鯛を引き立てるサニーレタスや大根など、あえてシンプルなものだけ。
お湯にくぐらせる回数次第で、食感が変化するのも「しゃぶしゃぶ」の醍醐味。サッと通せばプリッとしたレアな食感に。しっかり通せばホロっとした身の甘みが引き立ちます。
また、定番のポン酢だけでなく、さらに西伊豆特産の「塩鰹ポン酢」で味わう楽しみもあります。
しゃぶしゃぶも、伊東港でその日水揚げされた刺身の盛り合わせや、季節の炊き込みご飯などと合わせていただくコースです。
しゃぶしゃぶの締めは、有紀さんが最高のタイミングで作ってくれる雑炊です。金目鯛の旨みを吸い込んだお米の一粒一粒が、身に沁みる味わい。お腹いっぱいのはずなのに、スルスル……と入っていきます。
オーナー・岸本昭男さんインタビュー
主に料理を担当し、おいしい一皿を追求する昭男さんにインタビューしました。
── なぜ金目鯛を宿のメインに選んだのですか?
「これまで数多くの食材を扱ってきましたが、やはり決め手は、運ばれてきた瞬間の『わぁ!』というお客様の驚きですね。あの迫力あるサイズ感と華やかさ。その喜ぶ顔を見るたびに、この魚を選んで本当によかったと実感します」
── 料理をする際に最も大切にしていることは?
「ここでの一食が、その方の旅の記憶になる。そう信じて包丁を握っています。おいしいものを食べれば、人は自然と笑顔になりますから。『こころね』を選んでくれたお客様のために、一品一品、大切に作ることを心がけています。
帰り際、宿なら普通は『お世話になりました』ですよね。それが、晴れやかな声で『ごちそうさま!』と言われる時があるんです。まるで料理屋さんの帰りみたいでおもしろいですよね。そんな声を聞けるのが、私にとって何よりの喜びです」
女将・有紀さんインタビュー
主に接客を担当し、おもてなしにこだわりを持つ有紀さんにインタビューしました。
── 1日6組に絞った理由を教えてください。
「一人ひとりのお客様と、しっかり向き合いたい。お邪魔にならない距離感を保ちながら、心に寄り添うおもてなしを形にするには、6組という数がちょうどいいんです。
接客で大切にしているのは、私自身が『がんばりすぎない自然体』でいること。自分がリラックスしていれば、お客様の心の声も自然と届きます。その時々で適切な距離を測りながら、一歩ずつ歩み寄るようにしています」
── 記憶に残るお客様とのエピソードを教えてください。
「印象に残っているのは、農家を営まれていたリピーターのご夫婦です。ご自宅でも楽天トラベルの口コミをチェックしては、『またファンが増えたね』と微笑み合ってくださっていたそうで。宿の話題でご夫婦の会話が増えたと伺った時は、本当にうれしかったです」
そう話しながら、有紀さんは少しだけ瞳を潤ませました。
「残念ながらお二人とも他界されましたが、今でもふとした瞬間に思い出します。あのご夫婦との出会いは、ずっと色あせない宝物です」
朝食を担当するのは、栄養士の資格を持つ有紀さんがメイン。「心も体も整えて1日をスタートしてほしい」という想いから、全国から厳選した食材で手作りしています。
山形のブランド米「つや姫」や信州の卵、地元・伊東の無添加ひものなど、どれも一級品ばかり。なかでも自慢は、8種類以上の野菜が入ったお味噌汁です。
「お野菜のスープにお味噌が入っている感じかな」と有紀さんが笑うほどの具だくさんぶり。朝からしっかりパワーをチャージできる、心温まる一杯です。
朝食だけでなく、夕食時のデザートである特製プリンも、有紀さんが一つひとつ手作りしています。素材本来の香りを引き出したプリンは、なめらかな口当たりと深いコク、そしてやさしい味わいが魅力です。
この味に惚れ込んだファンが多く、今では通販やお土産としても大人気! プリンの味を引き立てるためにオーダーした「オリジナルコーヒー」と一緒に楽しむのが、最高にぜいたくな組み合わせです。
オーナー夫妻の思いがこもった館内
一番の自慢は、源泉かけ流しの貸切露天風呂です。大浴場はありませんが、この風光明媚なロケーションを独り占めできるのが醍醐味。明るい時間帯は穏やかな相模湾を、夜は満天の星空を眺めながら至福の時を過ごせます。
泉質は、カルシウム・ナトリウム-塩化物泉(低張性・中性・高温泉)。肌を塩のベールがやさしく包んでくれ、湯上がり後も“しっとりぽかぽか”が持続するそう。
さらに、「海が見える温泉足湯」も完備。足湯の周りに咲く花は、常連のお客様が持ってきてくれた球根から育ったものだとか。
「このお花も、玄関にある宿の看板も、実は常連さんからのプレゼントなんです。本当に、皆さんに支えていただいています」と、有紀さんは穏やかにほほえみます。
客室は、海が一望できるツインルームが中心。すべてのお部屋に、まるで秘密基地のようなミニロフトが付いています。
共有スペースには、数種類のアロマオイルが用意されています。これは、アロマ好きな有紀さんの「お部屋でも、心からくつろいでいただきたい」という想いから生まれたサービス。ゲストはお気に入りの香りを選んで、客室で楽しめます。
「こころね」の名前には、2つの意味が込められています。ひとつは、お客様の心の声を聴きながらおもてなしをする「心音」。もうひとつは、偽りのない真心で向き合う「心根」。
料理の一皿から、おもてなしの一つひとつ、そして何気ない会話に至るまで、そのすべてに、お二人の想いが込められています。
だからこそ、この宿で過ごす時間は、ただの“宿泊”では終わりません。気づけば心がほどけ、帰る頃にはまたここへ戻ってきたくなるのです。次の休日は、「こころね」で心が満たされるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
伊豆・伊東 金目鯛の宿 こころね
- 住所
- 静岡県伊東市宇佐美3713-16
- アクセス
- 熱海エリアより車で約30分
JR伊東線「宇佐美」駅より車で約5分、徒歩にて約25分(無料送迎有り・要予約) - チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:22:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 総部屋数
- 6室
- 駐車場
- あり/10台・無料
※急勾配のため極端に車高の低い車や、運転に自信がない方は、事前相談がおすすめ
取材・文・撮影/安藤美紀
