宮城県南三陸町にある「南三陸 ホテル観洋」は、志津川湾を一望できる海の見える宿。絶景温泉や三陸の海の幸とともに、ゆったりとした時間が過ごせます。
水平線を眺めながら温泉に身をゆだね、新鮮な魚介を味わい、ウミネコやカモメの姿に癒やされる。ほかでは味わえない、特別な宿泊体験をご紹介します。
目次
穏やかな志津川湾を眼前に望む宿
東京からは東北新幹線を利用し、約2時間で仙台駅へ。そこから車で約90分、穏やかな三陸の海・志津川湾沿いに「南三陸 ホテル観洋」があります。
仙台駅からは予約制の無料シャトルバスも利用可能。乗り換え不要で、重い荷物があっても快適にアクセスできます。
一歩館内に入ると、目の前には海が大きく広がります。気品のあるロビーは、日常から非日常へと気持ちを切り替えてくれる空間。これから始まる滞在への期待が高まります。
三陸の恵みを詰め込んだランチ
宿に到着したのはお昼ごろ。チェックインまで時間があったため、館内のレストラン「シーサイド」でランチをいただくことにしました。
ここからも志津川湾を一望できます。目の前には青い海が広がり、見ているだけで心が晴れていくようです。
プランクトンが豊富な志津川湾は、魚介が育ちやすい“天然のいけす”のような海。三陸の豊かな漁場として知られています。
今回選んだのは、自家製のイクラ醤油漬けをたっぷり盛り付けた「南三陸キラキラ丼」(2,860円)。季節の小鉢や味噌汁、お漬物が付いた、満足感のあるセットです。
大粒でハリのあるイクラの上に、南三陸サーモンとアワビをトッピング。見た目の華やかさはもちろん、それぞれの食感の違いも味わえます。
おいしさの理由は、「ホテル観洋」が水産に関わる事業も手がけている点にあります。新鮮な魚介を扱っているからこそ、イクラやサーモン、アワビなど素材そのもののおいしさが感じられます。
女性スタッフが考案した「海の冷やし中華」(2,600円)も、ぜひ味わいたい一品。
南三陸サーモンや志津川産の真ダコ、カニ脚、ホタテなどの海の幸に加え、野菜もたっぷり。さっぱりとした塩ポン酢味で、暑い季節でも食べやすく、するすると箸が進みます。
食後のデザートには、ちょっと珍しい「ふかひれソフトクリーム」(660円)を。竹炭を使った真っ黒なコーンに、濃厚な生乳ソフトクリームをのせ、気仙沼産のふかひれとはちみつを合わせた特製ソースがかかっています。
「フカヒレにはちみつ?」と驚くかもしれませんが、これが意外にもよく合います。
はちみつのやさしい甘さがミルクのコクを引き立て、フカヒレのほぐれるような食感がほどよいアクセントになっています。この不思議な組み合わせがクセになり、気づけばあっという間に食べきっていました。
お腹も満たされ、ロビーでのんびりしているとチェックインの時間に。手続きを済ませたあと、ウェルカムドリンクをいただきました。ドリンクはセルフサービスで、水だし緑茶と季節のジュースを自由に楽しめます。
なかでも印象的だったのが緑茶。水出しならではのまろやかな甘みがあり、ほっとひと息つける味わいでした。
海の見える客室でくつろぐ滞在
「ホテル観洋」の客室は全212室。東館と南館に分かれており、その多くが志津川湾に面した、海の見える客室となっています。
今回宿泊したのは、東館の「海側和室ツイン」。広さは約20〜23平米で、2名まで利用可能です。畳の上で足を伸ばしてくつろぎながら、就寝時はシモンズ製のベッドで快適に休める、和と洋の魅力を兼ね備えた客室となっています。
窓際に目を向けると、ウミネコやカモメが次々と集まってきました。まるで「待ってたよ!」と歓迎してくれているかのよう。
こうした光景が見られるのも、志津川湾の自然が豊かだからこそ。人と自然がすぐそばにある、南三陸らしい時間を感じることができました。
ちなみに「ホテル観洋」では、客室のシャワーや洗面所、飲料水に至るまで、「磁気活性水」と呼ばれる水を使用しています。磁力を利用して水の性質に働きかけるとされるものです。
実際に使ってみると水あたりがやわらかく感じられ、洗顔やシャワーの時間も心地よく過ごせました。
お着き菓子には、ウニの旨みを凝縮した「うにせんべい」が用意されています。サクッと軽い食感で、つい手が伸びるおいしさです。
館内着は、海をイメージしたさわやかなデザインの浴衣。袖を通した瞬間、温泉宿に来たなと感じられて、自然と気分も上がります。
最も客室数が多いのは、東館の「海側和室」です。広さは約20〜23平米で、最大4名まで利用できます。大きな窓からは海や空の移り変わる景色を楽しめ、気分をリフレッシュできます。
特別な日におすすめなのが、全4室限定の「スイートタイプ」です。角部屋に位置しているため眺めの良さが魅力で、目の前いっぱいに広がる海の絶景を独り占めできます。
スイートタイプは、和室2間とツインのベッドルームを備えたゆとりある造り。寝室にも窓があり、目覚めた瞬間から目の前に海の景色が広がります。
さらに、海を望むお風呂も備わっています。水平線を眺めながら湯に浸かれば、心身ともにリラックスできるはず。
絶景温泉で癒やされるひととき
ひと息ついたあとは、ゆっくり湯浴みを。お風呂は東館2階と南館4階にあり、それぞれ男女別の大浴場が用意されています。東館の女性用大浴場には迫力のある岩造りの露天風呂があり、大きな岩に囲まれた洞窟のような空間が広がります。
目の前には志津川湾が広がる絶景温泉で、潮風を感じながら自然に包まれるような感覚に。
ワイルドな岩風呂を満たすのは、2004年に開湯した自家源泉の温泉。分厚く硬い岩盤を貫き、地下約2,000メートルまで掘り進めてようやく湧き出した、国内でも珍しい貴重な湯です。
岩風呂の奥には、“おこもり感”のある洞窟風呂もあります。高さの異なる2つの湯船があり、上段の湯船に浸かると、志津川湾のパノラマビューを見渡せます。
泉質はナトリウム・カルシウム―塩化物泉。塩分を多く含むお湯が肌にうるおいの膜をつくり、湯上がり後も温かさとしっとり感が続きます。
内風呂は、磁気活性水を使用したやわらかな肌あたりのお湯。肩まで浸かると空と海がつながる景色に包まれ、ゆったりとした気分に浸れます。
さらに、海を望むドライサウナも。きらめく海を眺めながら汗を流せば、すっきりとした心地よさを感じられます。
同じく東館の男性用大浴場にも、岩造りの露天風呂があります。海と空を眺めながらの入浴は、開放感たっぷり。視界いっぱいの景色を眺めていると、日々の小さな悩みなど消えてしまいそうです。
湯上がりには、屋上「汐風の空」へ。360度のパノラマが広がり、眼下には穏やかな海が広がります。
海上には牡蠣やワカメを育てる養殖いかだが整然と並び、この土地ならではの風景が見られます。「ここで育った海の幸が夕食に並ぶのかも…」と想像がふくらみます。
海の幸いっぱいの豪華な夕食
景色を満喫したあとは、レストラン「シーサイド」で夕食を。テーブルには、脂ののったメカジキの煮付けや、マンボウの酢味噌和えなど、三陸ならではの海の幸が並びます。
感動したのがお造り。メカジキやみやぎサーモン、マグロなどが並び、新鮮さが際立つ一皿です。なかでもメカジキは、生でいただくと脂のりがよく、やわらかな口あたりが楽しめます。
新鮮なお刺身には、やっぱり地酒を合わせたくなります。そんなときにおすすめなのが、宮城の銘酒を気軽に味わえる「地酒の飲み比べセット」(1,980円)。「蒼天伝」や「浦霞」などの中から数種類を選び、飲み比べを楽しめます。
メインは、アワビの踊り焼き。鉄板の上で動く姿からも新鮮さが伝わります。焼き上がりをひと口いただけば、凝縮された旨みが口の中に広がります。
三陸ならではの味を楽しみたくて、別注料理の「モウカの星」(1,100円)を注文しました。モウカザメの心臓を刺身でいただく一品で、見た目はレバ刺しに似ていますが、臭みはほとんどありません。
三陸では酢味噌をつけて食べるのが一般的で、ぷりっとした独特の食感が特徴。地酒ともよく合います。
さらに、志津川産のタコを使った「志津川タコしゃぶ」(2~3人前・3,300円)も注文。だしにさっとくぐらせると、生とはひと味違う甘みとほどよい弾力が感じられます。
締めくくりは、ふっくらと炊き上がった「海鮮釜めし」です。蓋を開けると、磯の香りがふわり。ウニやカニが入った食べごたえのある一品に食欲をそそられ、お腹がいっぱいでも箸が進みます。
夕食後は、客室の窓から夜の海をのぞいてみてください。
満月の前後には、月明かりが海面に伸びる「ムーンロード」が現れます。さらに、波間に浮かびながら羽を休める海鳥の姿が見られることも。こうした景色は、断崖に建つ宿ならではの魅力です。
夜のお楽しみは、まだあります。「南三陸ホテル観洋」では月2回(第2・第4水曜日)、屋上で参加無料の「スターパーティー(星空観察会)」を開催。環境省の「夜空の明るさ調査」でも天体観測に適した場所とされており、タイミングが合えば満天の星空を堪能できますよ。
空と海が溶け合う夜明け
ぐっすり眠った翌朝は、少し早起きして日の出を眺めてみてください。海の向こうから昇る太陽が、ゆっくりと海面を黄金色に染めていきます。屋上ではその光景を一望でき、思わず見入ってしまいます。
大満足の朝食バイキング
朝食は、コンベンションホール「羽衣」で。クラシカルな空間にシャンデリアが輝き、特別感のある雰囲気です。バイキングには仙台麩の煮物やしそ巻、フカヒレスープなど、東北らしい料理が並びます。
会場には焼きたてのパンの香りも広がります。バイキング会場のオーブンで次々と焼き上げられるため、温かいまま手に取れるのもうれしいポイントです。
和洋さまざまな料理がそろい、少しずついろいろ味わいたい気分に応えてくれます。
試して大正解だったのが、シーフードカレーの「フカカツ」トッピング。フカカツとはサメの身を揚げたカツのことで、さらりとしたカレーにサクッとした食感がよく合います。朝からしっかり満足できる一品でした。
震災の記憶を語り継ぐ「語り部バス」
チェックアウト前に参加しておきたいのが、宿のスタッフが案内する「語り部バス」です。震災の記憶を伝えるために続けられている取り組みで、現在も毎日運行されています。
被災前の南三陸の写真を手にした案内役のスタッフが、車窓から見える現在の風景と重ねながら、当時のことを丁寧に伝えてくれます。
向かったのは、海から約300メートルの場所にある南三陸町立戸倉小学校です。東日本大震災の際、校長先生は地震直後に高台への避難を判断し、児童たちは裏山の神社へと避難しました。その結果、当時学校にいた91名全員が無事だったといいます。
校舎は津波で屋上まで水にのまれましたが、裏山への避難という判断が児童たちの命を守ることにつながりました。校内に残る、震災当時の時刻で止まった時計が、その出来事を静かに伝えています。
さらにバスは、海からおよそ200メートルの場所にある高野会館へ向かいます。震災当日、この建物には300名を超える人が集まっていましたが、迫る津波を前に、会館関係者の判断で屋上などへ避難誘導されたそうです。
その後、屋上近くまで浸水しましたが、中にいた人々は助かり、最終的に全員が救助されました。その建物を見つめながら、当時の状況や判断の重みを思わずにはいられません。
こうして語り継がれる記憶が、今もこの町に息づいています。
「南三陸 ホテル観洋」では、海の見える客室や絶景温泉、三陸の海の幸を楽しめます。志津川湾を望むロケーションの中で、ゆったりとした時間を過ごせるのも魅力のひとつです。
宿泊の際には、ぜひ「語り部バス」にも参加してみてください。この土地で起きた出来事に触れることで、旅の印象がより深く心に残るものになるはずです。
南三陸 ホテル観洋
- 住所
- 宮城県本吉郡南三陸町志津川字黒崎99-17
- アクセス
- 仙台空港から車で約90分、仙台駅から無料シャトルバスで約100分(要事前予約)
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 10:00
- 客室数
- 212室
- 駐車場
- あり/200台(無料)
取材・撮影・文/安藤美紀
