黒船が来航し、開国の舞台となった伊豆半島南部の下田。そんな土地に湧く蓮台寺(れんだいじ)温泉は、仏教僧の行基が開湯したという伝説も残る歴史ある温泉地です。
蓮台寺温泉を代表する名宿「清流荘」は、大浴場も客室の露天風呂も、さらには屋外プールまで源泉かけ流しで、1年中泳げるのも魅力。本場・フィンランド式のサウナや充実のスパ施設もそろい、夜には金目鯛やアワビ、伊勢エビなど、伊豆の海の幸を使った豪華な会席料理を堪能できます。
記念日やリトリート旅にぴったりの「下田蓮台寺温泉 清流荘」の宿泊体験をレポートします。
伊豆・下田にたたずむ歴史ある名宿へ
「蓮台寺温泉 清流荘」の最寄り駅は、伊豆急行の終点、伊豆急下田駅のひとつ手前にある蓮台寺駅。駅からは徒歩5分ほどです。蓮台寺駅と伊豆急下田駅から無料送迎も利用できます(要予約)。
車なら、東京から東名高速道路の沼津IC、または新東名高速道路の長泉ICで下り、天城越えを経て、約3時間。行きは山道、帰りは海沿いとルートを変えれば、異なる景色を楽しめます。
約6,000坪もの敷地を有する清流荘。門をくぐると、空気が一変します。高根山を背に悠然とたたずむ姿は、まるで時が止まったような静けさに包まれています。
玄関先でひときわ存在感を放っているのが、6メートルを超える巨大な灯籠。世界一大きな石灯籠としてギネス世界記録に認定されたと聞きます。長年、多くの宿泊客を迎えてきた旅館のシンボルです。
館内に入ると、歴史を感じさせる純和風の空間が広がり、オリジナルのアロマの優しい香りに包まれます。さっそく気持ちがすっとほぐれ、非日常モードへ切り替わっていきます。
ロビーで、地元のぐり茶をいただきながらチェックイン。窓の外には稲生沢(いのうざわ)川の流れと、四季折々の風景が広がります。旅の始まりにふさわしい、静かで優雅な時間です。
記念日の滞在に。露天風呂付き・部屋食のスイート客室
今回宿泊したのは、2025年にリニューアルした「メゾネット露天風呂付スイートツイン」。87平米の広さを誇り、1階がリビング、2階がベッドルームというメゾネット仕様の2名用のお部屋です。
木のぬくもりを感じるテーブルや落ち着いた色合いのソファは、この部屋の“静寂”というテーマに合わせて誂えられた特注品。
大きな窓からは陽光が差し込み、窓を開けると、さわやかな風とともに川のせせらぎが聞こえてきます。
約8畳の広々としたテラスにはガーデンチェアが置かれ、読書や日向ぼっこをしながら、のんびりと過ごしたくなる心地よさ。
さらに、テラスには露天風呂があり、お湯はぜいたくにも源泉かけ流しです。
パウダールームからシャワールーム、そして露天風呂へと続く動線も使い勝手が良く、誰にも邪魔されない自分だけの湯浴みを満喫できます。また、1階、2階それぞれにパウダールームとトイレが備わり、快適に過ごせる工夫が行き届いています。
「メゾネット露天風呂付スイートツイン」の特別感は間取りだけではなく、アメニティにまで。シャワーヘッドからシャンプー、トリートメント、ボディウォッシュまで人気美容ブランド「ReFa(リファ)」のものがそろいます。
さらに、「ReFa」のドライヤーとヘアーアイロンが2種類。旅先だからこそ、いつもと違うヘアースタイルを楽しみたくなります。
「メゾネット露天風呂付スイートツイン」には、国産の自然由来成分にこだわった「THREE(スリー)」のスキンケアセットも用意。クレンジングオイル、洗顔せっけん、ローション、乳液、クリーム、コットンまでそろっているのはうれしい限りです。
そして、冷蔵庫内のドリンクがすべてフリーなのもこのお部屋の魅力。高級フルーツジュースやビール、特別な日にぴったりの「ヴーヴ・クリコ」のシャンパンなど、上質なラインナップに心踊ります。
また、客室には、静岡県の伝統工芸である駿河塗の下駄や駿河蒔絵が飾られ、名産品の掛川茶を特製の茶器で味わえるなど、細部にまで上質な趣が漂います。
そして、「メゾネット露天風呂付スイートツイン」は夕食も朝食も部屋食。お部屋にこもりたくなりますが、ハンドメイドのコットン100%のルームウェアに着替えて、宿自慢の「ガーデンスパ」へ。これを目当てに訪れる人も多いと聞き、期待も高まります。
希少なサウナと1年中入れる温泉プール、南国ムードあふれる「ガーデンスパ」
約2,000坪というスケールを誇る「ガーデンスパ」。そこには、先ほどまでの純和風の温泉旅館とはまったく異なる景色が広がっていました。頭上ではヤシの木が風に揺れ、プールサイドにはビーチチェアやガゼボが。まばゆい南国リゾート気分に浸れます。
古代ローマ式浴場を再現した「テルマリウム」
そんな異国情緒を一層高めているのが、古代ローマ式浴場を再現した「テルマリウム」。
白亜の建物内には、温度の異なる2つのスチームサウナがあり、アロマの香りと蒸気に包まれながら、じっくりと体を温められます。温度は低めなので、サウナ初心者や熱すぎるサウナが苦手な人にもぴったりです。
温水と冷水、交互に足を浸すことで、発汗作用とリラックス効果を期待できるフットバスも。数種類のアロマオイルが用意されていて、好みの香りをプラスできます。
さらに珍しいのが、「テピダリウム」と呼ばれる陶製のベッド。ベッド自体が40度弱に保たれ、体の深部をじわじわと温めてくれます。一度体験するとクセになる心地よさです。
本場・フィンランド式の希少な「ケロサウナ」
そして、サウナ愛好家たちが「一度は体験してみたい」と言うのが、本場・フィンランドから材料と職人を招いて造られた「ケロサウナ」。
「ケロ」とは、フィンランド北部、北極圏のラップランド地方で採取した樹齢数百年の立ち枯れた木材で、その希少性から「木の宝石」とも称されます。芳醇な香りと高い蓄熱性が特徴で、やさしく包み込まれるようなやわらかな熱を体感できます。
セルフロウリュ可能なのも、サウナ好きにはたまらないポイント。お茶や桜といった季節限定のロウリュ専用アロマも用意されています。
サウナ室の目の前には地下水を使った水風呂、その先には外気浴用のチェアがスタンバイ。自然に囲まれ、ととのう環境がバッチリそろっています。宿泊した人だけに許されるぜいたくなサウナです。
「ケロサウナ」も「テルマリウム」も水着着用必須。男女一緒に利用でき、カップルにもおすすめ。サウナ着(無料)やレンタル水着(大人550円、子ども330円)が用意されているので、手ぶらでもOKです。
さらに、火照った体を天然温泉プールでクールダウンできるのも清流荘ならでは。プールにも源泉かけ流しの温泉が使われ、冬でも水温は30度前後と、1年を通して泳げます。深さの異なる2つのプールに加え、子ども用のプールも設けられているのでファミリーにも好評です。
加水なし、100%源泉かけ流しの大浴場
温泉本来の良さを堪能できる100%源泉かけ流しの大浴場も見逃せません。大浴場は2カ所あり、深夜24:00に男女が入れ替わります。23:30~24:00と11:00~14:00を除き、深夜でも早朝でも、入浴可能なのもうれしいポイント。
立派な木の屋根に覆われた露天風呂「朱鷺(とき)の湯」は、木々に囲まれて、広々とした浴槽で湯浴みを楽しめます。
内風呂ももちろん、源泉かけ流しです。
もう1カ所の露天風呂「白鷺の湯」は、自然の岩をそのまま配したような、重厚で野趣あふれる石組みが印象的。目線の高さに庭園の木々が広がり、より自然との一体感を味わえます。
内風呂も大きな窓が設けられ、明るく開放的。
お湯は弱アルカリ単純泉で刺激が少なく、子どもから大人まで浸かれるやさしい泉質です。加水も加温もしないため、温度調整は毎日、3本の自家源泉を駆使してスタッフの手で行っているそう。丁寧に調整されたお湯に身を委ねていると、体だけでなく心までじんわりとほどけていくようでした。
脱衣所にはタオルがたっぷりと用意され、クレンジングから洗顔料、化粧水、乳液もそろっています。髪ゴムにさり気なく和の装飾があしらわれているのも気分が上がります。
また、大浴場とは別に、露天風呂と内風呂を備えた貸切風呂も。料金は1,650円(50分間)ですが、23:00以降は無料で利用可能。館内の温泉施設の充実ぶりは、1泊では体験しきれないほどです。
「忙しい毎日を過ごしていると思うので、ここでは時間をぜいたくに使っていただきたいですね。チェックインしたら、まずは温泉プールやサウナを堪能して、お昼寝されるのも良いと思います。目覚めたら、温泉でゆっくりして、ご夕食を召し上がっていただくなど、当館を存分に堪能してもらうことが究極のリラクゼーションになればうれしいです」と、支配人の土屋さんはおっしゃっていました。
下田名産の金目鯛やアワビ、伊勢エビが並ぶ豪華な夕食
サウナやプール、温泉でリフレッシュしたあとの夕食は、一層待ち遠しいもの。清流荘は料理も高い評価を受けています。1979年には、サミットで来日中だったアメリカのカーター大統領の食事場所に選ばれたこともあるそうで、その味は折り紙付きです。
今回宿泊した「メゾネット露天風呂付スイートツイン」は部屋食なので、下田の旬の食材を活かした料理が、次々とお部屋のテーブルに並びます。
また、このお部屋は夕食時のドリンクフリーフロー付きで、静岡の地酒やビール、ワイン、ウイスキー、焼酎など、幅広いラインナップから好きなだけ楽しめます。
季節を感じる美しい盛り付けの前菜やお吸い物に続いて、地魚のお造りが登場。内容は水揚げ状況によって変わりますが、この日は、伊勢エビ、シマアジ、タチウオ、アオリイカ。いずれも鮮度抜群で、ひと口ごとに濃厚な味わいや食感に驚かされます。伊豆名産の本わさびが、その味わいを一層引き立てます。
金目鯛の水揚げ量日本一を誇る下田に来たなら、やはり金目鯛ははずせません。ほかのメニューは季節によって変わりますが、清流荘では1年中、金目鯛とアワビをいただけます。
じっくり丁寧に火を通した姿煮は、身はふっくらやわらかく、箸ですっとほぐれるほど。甘辛いタレと金目鯛の濃厚な旨みが重なり合い、旅の思い出に深く刻まれます。
続いては、ホワイトアスパラを細くパスタ状に仕立て、伊勢エビと合わせた、料理長の遊び心が感じられる一皿。力強い伊勢エビの旨みと繊細なホワイトアスパラの甘みが見事に調和し、ほろ苦いふきのとうの天ぷらが春を感じさせます。
アワビは新鮮なものを、目の前で酒蒸しにしていただきます。食感は驚くほどやわらかく、もちもちとして、とろけるよう。余計な味つけはせず、磯の香りとアワビ本来の旨みをまっすぐに味わえます。金目鯛だけでなく、高級食材のアワビまで1年を通して味わえるなんて最高にぜいたく。
さらに、フグの白子が入った玉地蒸し(茶碗蒸し)や穴子ご飯が続きます。
多彩な伊豆の山海の幸をいただき、お腹も心も満たされた頃、最後に供されるのは季節を映す甘味。静岡生まれのいちご「紅ほっぺ」の上品な甘さと酸味が、食事を華やかに締めくくってくれました。
夜は趣あるバーで大人の時間を
20:00になると、ひっそり扉を開くのが隠れ家的なバー「ポーハタン」。ペリーが乗っていた旗艦の名前を冠したバーは、インテリアも船内を思わせます。珍しい静岡県産ウイスキーや、バーテンダーによるオリジナルカクテルを、ノスタルジックな空間で堪能できます。
または、知る人ぞ知る秘密の場所で、夜のひとときを過ごすのもおすすめです。「三角スペース」と呼ばれるその場所は、ライトアップされた幻想的なスパガーデンを一望できる特等席。
歴史ある木製スピーカーから流れる音楽に耳を傾けながら、心地よく1日の終わりを迎えられます。
豊かな下田の海鮮に彩られた朝食
「メゾネット露天風呂付スイートツイン」は朝食も部屋食なので、朝食のギリギリまで眠ったり、客室の露天風呂で朝風呂を満喫したり、朝の時間をゆっくり過ごせるのもこのお部屋の醍醐味です。
朝食には、炊きたてのご飯が進むおかずがずらり。サラダにわさびドレッシングを使用するなど、地元らしさが細部にまで息づいています。
お椀のふたを開けた瞬間、目に飛び込んでくるのは伊勢エビ。夕食の伊勢エビの殻を活かした出汁は、その風味が食欲をかき立てます。
たっぷりと盛られたアジのたたきは、新鮮で身が締まっていて、噛むたびにぷりっとした弾力を感じます。
金継ぎした美しい皿にはアジの干物が。身はふっくらとやわらかく、皮はパリッと、絶妙な焼き加減。料理長が部屋食用に厳選した器はどれもアートのように美しく、料理を鮮やかに彩り、食事の時間を豊かなものにしてくれました。
チェックアウトは11:00とゆっくり。ロビーでは、お部屋で使ったルームウェアやストールも販売されていて、着心地の良さから自宅用に購入する人も多いのだとか。
一番人気の商品は、ウェルカムスイーツのくず餅セット。旅館オリジナルの和菓子で、黒豆といちじくの2種類があります。甘さ控えめで、くず餅ならではのもっちりとした食感がたまらない逸品です。
サウナハットをはじめとしたサウナグッズも人気。特にケロサウナのロゴが入ったオリジナルのTシャツやバッグは売り切れになることもあるそう。
家族旅行やグループ旅行におすすめの客室も
全23室を有する清流荘には、今回宿泊した定員2名の「メゾネット露天風呂付スイートツイン」のほか、グループ旅行や家族旅行にぴったりの6名まで宿泊可能な客室や、100平米超の広い客室まで、多彩にそろっています。その大半の客室で、源泉から注ぐ温泉を堪能できます。
誕生日や記念日など、特別な日の3~4名での宿泊には「メゾネット露天風呂付スイート和洋室」がおすすめ。露天風呂付き、メゾネット仕様で95平米の広さを有します。ご紹介した「メゾネット露天風呂付スイートツイン」と同じ、ワンランク上のアメニティが備わり、夕食・朝食は部屋食、夕食時のドリンクフリーフロー付きで、最大4名まで宿泊できます。
110平米もの広さを誇る「源泉内風呂付特別室」は、6名まで宿泊可能。11.5畳のリビングに6畳の寝室、12畳のお部屋や3畳の小部屋と空間を区切ることができるので、グループ旅行や三世代旅行などにおすすめです。
アメニティなどは「メゾネット露天風呂付スイートツイン」と異なりますが、温泉内風呂付きで、夕食・朝食ともに部屋食で楽しめます。
ペリーが来航し、日本開国の舞台となった歴史を持つ下田は、それ以前から港町として、船が出航するための風待ちの場所でもありました。風を待ちながらゆっくりと過ごす時間も、次の目的地に向かうための大切な時間。それは昔も今も同じ。
温泉やサウナで体をととのえ、地元の名産をたっぷり堪能する「清流荘」での時間もまた、明日へ向かうための力を蓄えてくれます。慌ただしい日常から少し離れて、自分をととのえる旅に出たいときにも、とっておきの記念日や大切な人との思い出作りにも、ぜひ選びたい一軒です。
下田蓮台寺温泉 清流荘
- 住所
- 静岡県下田市蓮台寺河内2-2
- アクセス
- 【車】新東名高速「長泉」IC・東名高速「沼津」ICより約90分
【電車】伊豆急行「蓮台寺」駅より徒歩約5分、「伊豆急下田」駅より車で約10分(無料送迎あり、要予約) - 総部屋数
- 23室
- チェックイン
- 14:00(最終チェックイン17:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 駐車場
- 無料
取材・写真・文/浅井みらの
▼周辺の観光情報

